排卵誘発剤

不妊治療

排卵誘発剤は大きく分けて”卵胞を育てる薬”と”排卵を促す薬”の2種類に分類されます。通常は排卵障害のある方に用いますが、無いとされる方も服用する事で妊娠率が上がるとされています。その為、タイミング療法、人工授精、体外受精の全てで併用される事が多い薬です。

クロミフェン製剤(クロミフェンクエン酸塩)#卵胞を育てる薬/内服薬
1961年にアメリカのメレル社(現サノフィ社)で開発された排卵誘発剤です。商品名としてはクロミッド、セロフェンなどがあります。40年以上臨床で使用されており、安全性が確立している薬です。
〈作用機序〉
エストロゲンの受容体を阻害します。エストロゲンは卵胞から分泌されているホルモンで、卵胞の発育に伴い分泌量が増加します。このエストロゲンの分泌量が増えると卵胞は十分に成長したとされ卵胞を育てるホルモンである卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)の分泌量を抑え始め、体は排卵へと向かいます。つまり、エストロゲンの受容体を阻害する事で、「エストロゲンが増えていないので卵胞発育はまだ完了していない」と間脳に錯覚させる事が出来ます。結果、卵胞刺激ホルモン(FSH)黄体形成ホルモン(LH)の分泌を促し、卵胞を発育させる事が出来ます。

レトロゾール#卵胞を育てる薬/内服薬
開発した乳がんの治療を目的としてファイザー社で開発された治療薬です。しかし、副効果として卵胞発育が伴うことが分かり、不妊治療においてはこちらを目的として使用しています。
〈作用機序〉
レトロゾールは薬効分類上、アロマターゼ阻害剤と呼ばれており、エストロゲンの生成に必要なアロマターゼと呼ばれる酵素の働きを阻害する効果があります。結果としてエストロゲンを低く保つ事ができるので、卵胞刺激ホルモン(FSH)黄体形成ホルモン(LH)の分泌を促します。また、エストロゲンの生成を抑制するという事はエストロゲン生成前のホルモンのアンドロゲンというホルモンがそのまま卵胞の中に残る事になります。実はこのアンドロゲンは卵胞の発育を促進する役割もある為、こちらの効果も併せて卵胞を発育させる事が出来ます。

ゴナドトロピン製剤#卵胞を育てる薬#排卵を促す薬/注射薬
ゴナドトロピン製剤は上記の薬とは違い、ホルモンを直接補う薬の総称です。ゴナドトロピンとは性腺刺激ホルモンの事で、これに属しているのが卵胞刺激ホルモン(FSH)黄体形成ホルモン(LH)達です。この2つのホルモンがバランスを取り卵胞発育と排卵が成り立っているので、使い方によってどちらの目的も果たすことができます。様々な薬が存在し、それらの違いは①FSHとLHの比率、1:1で含まれている物からどちらかのみ含まれている物まで様々な配分があります。②人由来の物か遺伝子組み換えで作られた人工物か。この2点で分けられています。卵胞を育てる目的として使用する場合はFSHの補充を目的として用いられ、排卵を促す場合はLHの補充を目的として用いられます。

タイトルとURLをコピーしました